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はじめてのお散歩

 わんこ日記がずいぶんとたまってしまった。ので、少しずつ公開である。

 うちのポコ。ワクチンプログラムも完成したし、そろそろ外に慣れさせないといけない。というわけで、はじめてのお散歩である。この日のために、ペットショップでハーネスとリードを買ってきたのである。

 まずは玄関の土間に下ろすと・・・

玄関の土間に降りる

 すでに腰が引けている(汗)。

 散歩に行きたくないなんて、一体どういう犬なんだお前は( ̄□ ̄;
 なでなですること10分。ようやく外に一歩を踏み出した。

初めてのお外


 ・・・と思ったら、全身毛が逆立ったまま硬直しているΣ( ̄□ ̄|||)
 さらにあやすこと10分。なんとか道路に出た。

初めての道路

 完全に腰が引けているがΣ(゚□゚(゚□゚*)

 近くの人の足にすり寄って動かないポコ。

すり寄って動かないポコ

 引っ張っても動かない(゜ロ゜ノ)ノ

引っ張っても動かないポコ


 この後、20分近くかかってようやく近所をお散歩できた。ふう。

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テーマ : ワンコ日記 - ジャンル : ペット

田中カレン 「星のどうぶつたち」 | 仲道郁代(Pf)

 今年のお盆はペルセウス座流星群を見ようとうちの奥さんが張り切っていたが、あいにくの曇天で見ることができなかった。天候ばかりは仕方がないのだが、どうもあれ以来、奥さんは不満のようで、次の流星群はいつかなあとぶつぶついいながらインターネットを調べている。そんな奥さんを慰めるべく、今日は田中カレンさんが20世紀後半に書いた子供のためのピアノ曲集「星のどうぶつたち」を聴いている。


karen_tanaka.jpg


 20世紀の音楽と言えば無調で聴きづらいというイメージが大半だが、こうしたとても美しい曲もある。子供向けとはいえ、全20曲からなるこの曲集は、どれをとってもフランス風の瀟洒な響きがして、私たちを銀河を渡る旅へと連れて行ってくれる。仲道郁代さんのみずみずしく抒情性あふれるピアノも素晴らしい。特に19曲目、「はくちょう」の、なんと素晴らしいことか。


[試聴]※アマゾンのページで試聴できる
http://www.amazon.co.jp/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3-%E3%81%93%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E6%9B%B2%E9%9B%86-%E4%BB%B2%E9%81%93%E9%83%81%E4%BB%A3/dp/B00005EGA6

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

元祖にぼしラーメン大和軒 | 長野市稲葉

 素晴らしいラーメン屋さんに出会った。

 頻繁に通る道沿いに、ちょっと前からラーメン屋さんが出来ていた。看板に大きく「元祖にぼしラーメン」と書いてあって、これは麺好きにとって気にならないわけがない。というわけで、ついに食べに行ってきた。「大和軒」さんという、ラーメン屋さんである。

元祖にぼしラーメン大和軒の看板

元祖にぼしラーメン大和軒の外観


 店内の張り紙を見ると、東京都の板橋で昔評判となった「元祖にぼしラーメン」の味をきちんと受け継いでいるとのこと。初回ということで、シンプルにらーめん(700円)の大盛り(+100円)を注文。

らーめん | 元祖にぼしラーメン大和軒


 これが・・・絶品だった。(私のような素人がいうのもおこがましいのだが。)

 「にぼしラーメン」で、しかも「元祖」というのだから、相当にガツンとくる魚介系のスープを想像していたのだが、まさに逆。あっさりマイルドなスープの中に、にぼしをはじめいろいろな魚のダシがはっきりと、絶妙のバランスで配置されている。このトータルバランスの素晴らしさに舌を巻いてしまった。

にぼしの効いたスープ | 元祖にぼしラーメン大和軒


 きちんと主張がありながらも、何杯でも飲めるスープ。

 麺はストレートで結構やわらかめ。個人的にはもう少し固めが好きなのだが、表面がツルツルしていて舌触りにしても喉越しにしても気持ちが良い。さらにプルプルした独特の弾力感があって、噛むとモチモチしている。この麺ならば、この柔らかさもアリなのだと思う。

 チャーシューも美味しい。
チャーシュー | 元祖にぼしラーメン大和軒



 うまかった。


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元祖にぼしラーメン 大和軒 [地図]

営業時間:11:30~15:00 18:30~23:00(火曜定休)
住所:長野県長野市稲葉2725-1
電話:026-221-5480

テーマ : ラーメン - ジャンル : グルメ

きのこ皿とそば | 山品

 以前にも書いた山品というお蕎麦屋さん。長野県大町市の美麻というところにある美味しいお蕎麦屋さんである。このところ白馬村へ仕事で行くことが多く、このお蕎麦屋さんが通り道の近くにある。となればせっかくのランチ。行かなければ損である。

 今日もざるそばを頼んだ。

山品のそば


 前回は書かなかったけれど、実はここのお店、きのこ皿(400円)がとても美味しいのである。ちなみに信州では新鮮な地のきのこが取れたらさっとゆでて大根おろしと醤油をかけて食べるのが一般的であるが、同行した神奈川県在住の方は、初めてみる食べ方だとおっしゃっていた。もちろんしいたけやエリンギなどのどちらかというと乾いた感じのキノコには合わない食べ方だと思うけれど、マイナーな食べ方なんだろうか・・・美味しいのに。


山品のきのこ皿


 うまかった。

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山品
営業時間:10:30~売り切れまで(金曜定休)
住所:長野県大町市美麻新行14658
電話:0261-23-1230

テーマ : うどん・そば - ジャンル : グルメ

管楽器職人さんの楽器

 普段から厳しい眼差しで管楽器と向き合う技術者さん。その職人さん所有のトランペットが、珍しく工房に置いてあった。仕事に厳しい姿勢で黙々と臨む職人肌の方だから、きっと抜群のメンテナンスが施されているのだろう。

trpcase.jpg


 ん?


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 リラックマっ!?(@へ@;;;



テーマ : 楽器 - ジャンル : 音楽

岩魚(イワナ)の塩焼き

 うまい日本酒にはうまい肴。とりわけ美味しい肴の一つが岩魚(イワナ)である。よく都会からいらっしゃった方に説明するにあたって山女魚(ヤマメ)と混同される方も多いけれど、これは全然違う。イワナもヤマメもサケ目サケ科であるが、ヤマメというのは、サクラマスの亜種であるのに対し、イワナはイワナ属というれっきとした種なのである。もちろん味も全く違う。個人の好みもあろうが、イワナを食べ慣れてしまうとあまりのおいしさに、ヤマメなど食べたくなくなってしまう。(いやヤマメしか釣れない時は喜んで食べるのですが・汗)ただ非常に警戒心が強く、頭の良い魚なのでなかなか釣れない。また生息域も河川の源流近くの水温の低い水のキレイなところにしか棲めないので、釣るにはそれなりに川沿いを登る必要がある。

 さて今回はそんな釣れたてのイワナを入手することに成功。早速塩焼きである。

岩魚(イワナ)の塩焼き


 天然のイワナを味わうなら、骨酒か塩焼きだろう。養殖モノならば甘露煮というのもアリかもしれないが、新鮮な天然ならばもったいない。中でも素材の味をそのまま堪能できる塩焼きは本当においしい。

 うまかった。


テーマ : 美味しかった♪ - ジャンル : グルメ

シューベルト アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D821 | マイスキー(Vc) アルゲリッチ(Pf)

 残暑厳しいこの頃とはいえ、今週に入ってから随分と涼しくなってきたと感じるこの頃である。秋の夜長にはまだ早いが、涼しい夜には久しぶりにチェロが聴きたいと思った。今日棚から見つけたのは、フランツ・シューベルトが、アルペジオーネという楽器のために1824年に作曲したソナタ。アレグロ・モデラート、アダージョ、アレグレットの3楽章からなっている。

 アルペジオーネ(アルペジョーネ)というのは、1823年頃にウィーンのギターメーカーであるシュタウファーによって発明され、その後少しばかりの流行をした後、まもなく絶えてしまった楽器である。形はチェロやヴィオラ・ダ・ガンバにそっくりで、膝のあいだに挟み弓で弾くところも同じである。ただ一番の違いはチェロが4弦(弦が4本張られている)のに対して、アルペジオーネはギターと同じ6弦。しかも開放弦の音もギターとまったく一緒なのである。また指板はチェロと同じく黒いが、そこにはギターと同じくフレットが付いているという不思議な楽器だ。(チェロやヴァイオリンにはフレットがない。)チェロのようなコシやハリのある音色は出ないものの、独特の深みと味わいのある音色を出す。そんな楽器である。(ちなみにアルペジオーネは今日ほとんど残っていないから、この曲は通常、チェロまたはヴィオラによって奏される。)

[参考]ウィキペディアにおける解説
http://en.wikipedia.org/wiki/Arpeggione

[参考]本物のアルペジオーネによる「アルペジオーネ・ソナタ」の演奏


 
 さて今日聴いたのは、1984年にチェリストのミッシャ・マイスキーが、ピアニストのマルタ・アルゲリッチとともに演奏したもの。まず見事なのが序奏のアルゲリッチのピアノ。マイスキーのチェロが登場する前だというのに、このピアノだけで一気に世界に引き込まれてしまうのである。一体、どっちが主役なんだろうか(笑)。それにしてもなんと抒情性溢れるピアニズムだろうか。存分に旋律を歌いあげ、存分に音楽を愉しんでいる。音楽することの喜びに満ちた、そんな演奏である。ミッシャ・マイスキーのチェロもアルゲリッチの巧みなリードに従い、この魅力あふれる旋律線を見事に奏でている。


ma_ar.jpg



[試聴]
※残念ながら同じ演奏の試聴できるサイトがなかった。これは同じくアルゲリッチのピアノだがヴィオラと一緒に演奏したもの。
http://www.youtube.com/watch?v=ga1pey0A0cA


テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

ごはん屋 いちぶん | 長野市安茂里

 少し前に、地元情報誌「ながの情報」のYさんが取材にいらした折に、長野駅前にあった「ぶあいそー」という名のラーメン屋さんが大変おいしかったのに無くなってしまって残念という話をしたところ、実は別のところで名前を変えて営業中という情報をゲット。先日、取材された記事が載った雑誌と一緒に、名前を書いて送ってきてくださった。それが今日行ったこの「いちぶん」という店である。Yさん本当にありがとうございます。

 とにかく場所が分かりづらい。というか、場所そのものは分かりにくくはないのだが、一見すると普通の住宅のように見えてしまうため、一度通り過ぎてしまった。


 木をふんだんに使ったお洒落な雰囲気のお店。駐車場は3台分あるみたい。

いちぶん 長野市安茂里



 これがメニュー。ラーメンは信州みそラーメン」と「中華そば」(しょうゆ味)しかなくて、これなら迷わなくていい(笑)。しかもごはんが付いてオール500円。うれしい値段である。

いちぶんのメニュー


 というわけで今日は、「中華そば」と「信州みそラーメン」両方を食べた。

 こっちが「中華そば」。

中華そば いちぶん


 昔の「ぶあいそー」時代を思い出す魚介系の味がしっかり出ている醤油ラーメン。でも決してしつこくなく、あっさりとした優しい味わい。トロトロの玉子が最高である。すごく美味しい。

 これが「信州みそラーメン」。

信州みそラーメン いちぶん

 甘酒・酒粕を入れた甘みのあるマイルドなみそ味。少し辛みがついていて、夏バテにもよさそうである。すごく美味しい。


 うまかった。



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ごはん屋 いちぶん [地図]
営業時間:11:30~21:00(火曜日定休)
住所:長野県長野市安茂里1783-31
電話:026-227-6274
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[追記]
 ラーメンとは関係ないが、「ながの情報」さんのCD紹介コーナーにひっそりと載っていたりする私。なぜか非常に眠そうな顔である・・・全然眠くなかったんだけど、おかしいなあ(汗)

ながの情報に掲載

テーマ : ラーメン - ジャンル : グルメ

ナヴラタンコルマ | MTR社

 お盆休みも終わり、今日から出勤である。このお盆は大掃除などで大半がつぶれてしまったこともあって、家にこもりきりだった。久しぶりに外に出てみるとやっぱり暑い。まだ夏である。夏といえばやっぱりカレー。今日はインドのカレーを食べた。


ナヴラタンコルマのパッケージ写真


 ナヴラタンコルマというカレー。購入したお店のPOPによると、「ナヴラタン」とは「9種類の宝石」という意味だそうで、9種類の野菜やナッツを使い、クリームで煮て仕上げてあるとのこと。古くから王族向けのリッチな料理なんだそうである。レトルトなので手軽に楽しめるのもうれしい。


ナヴラタンコルマ


 レトルトながら、本格的で素晴らしい味わい。純ベジタリアンカレーというだけあって、味わいはマイルドで優しく、あっさりとしている。


 うまかった。

テーマ : インドカレー - ジャンル : グルメ

みそら野

 このところ長野県北安曇郡にある白馬村というところの現場に仕事でよく行っている。そこで見つけた地名。なんて音楽的な地名なんだろうか。ちなみに信号が縦長なのは雪深いので、横長だと重みで信号折れちゃうのです。


みそら野


E(ミ)G(ソ)A(ラ)・・・・・・何かのモチーフになりそうだ。

テーマ : 日記 - ジャンル : 日記

山形米沢中華そば | 中華そば「しま田」 | 長野市岡田町

 前回前々回も紹介した長野市岡田町にあるラーメン屋さんである。どうしてか分からないのだが、ここのラーメンは毎日でも食べたくなってしまう。・・・事実、このところほとんど毎日食べに行っているわけであるが、本当に美味しい。

 中でも一番のお気に入りが今日食べた「山形米沢中華そば」。


山形米沢中華そば


 醤油ベースのオーソドックスなラーメンだが、魚系の出汁がよく効いていて、旨みがいつまでも口の中に残る。ツルツルした麺といい、大きなチャーシューといい、飽きのこない味。


 うまかった。


テーマ : ラーメン - ジャンル : グルメ

木のいのち木のこころ 小川三夫(著)

 素晴らしい本だった。人様から借りた本なのに、3回も4回も読み返してしまった。法隆寺を現代まで守り抜いた宮大工。その棟梁が書いたこの本には、宮大工一筋に生きるご自身の、仕事にかけるこだわりと情熱が漲っている。深みのある言葉の数々に、大工以外の仕事に就く私にもはっとさせられることが多く、とても力づけられた。実はこの本の前に、本書の著者の小川氏の師匠である故・西岡棟梁が書いた本もあって、両方とも職場の方が薦めてくれたのである。


木のいのち木のこころ


 「自分で考え、体で覚えたことは、まだなんぼでも伸びていく。だからある意味では知恵なんかなくったっていいんだよ。そのほうがずっと身につくし、自分で考えるようになる。」(同書より引用)

 飾らない話から伝わる、深い言葉がたくさんつめられている。

テーマ : 読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

ワーグナー 歌劇「タンホイザー」 | ルネ・コロ(Ten.)アルブレヒト指揮ハンブルク国立歌劇場管弦楽団

 お盆休み最終日。昨日に引き続いてオペラを見た。先日の大整理で出てきた古いビデオ。1996年6月2日NHKホールにおいて行われた、ハンブルク国立歌劇場の日本公演である。ルネ・コロがタンホイザー役を、ナディーヌ・セクンデがエリーザベト役を演じたもので、NHKで昔放送されたものを録画しておいたものだった。以下、あらすじ。(完全にネタバレしてます。ご注意ください。)

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 タンホイザーは、歌の名手であり騎士。領主の姪エリーザベトと精神的な愛を結んでいたが、やがてより官能的な愛を求めてヴェーヌスブルク(女神ヴェーヌスが住まう地)へと趣き、肉欲の限りを尽くす。勝手な奴である。しかし無限に続くそんな生活に嫌気がさし、強い意志をもって元の世界ヴァルトブルクへと戻る。戻ったところをたまたま通りかかった元同僚の騎士ヴォルフラムや領主に発見され、彼らは城に戻ることを勧めるが、タンホイザーはヴェーヌスベルクにいた罪の重さから頑なに拒む。しかし「エリーザベトが待っている」との言葉で一転して前言を撤回し、城に戻ることに同意する。調子のよい奴である。城に戻ると騎士たちによる歌合戦が開催されて、タンホイザーも出場。お題は「愛の本質」についてを歌うというもので、他の騎士たちが清らかな愛を歌うのに対し、タンホイザーは空気を読まずにいちいち反論。しまいにはヴェーヌスをたたえる下品な歌を歌い、殺されかけるも、エリーザベトの嘆願により救われる。されど神を冒涜した罪は重く、領主は「ローマへ行って懺悔して許されたら帰ってきてもいいよ。」とタンホイザーを追放し、彼は巡礼団に加わって旅に出る。さらに時間は経過し、毎日タンホイザーの赦しを願って祈るエリーザベトのところに、ローマからの巡礼団が帰着する。しかしその中にタンホイザーはいない。思い込みの激しいエリーザベトはこうなったら自分の命をささげてでも神の許しを得るしかないと消える。夜の暗闇の中で歌うヴォルフラムのところに、ボロボロになったタンホイザーが現れる。しかし彼が口にしたのはヴェーヌスブルクの快楽を知った罪は重く、赦しは得られなかったこと、そして「この杖に若葉が芽吹いたら赦してあげるけど、そうでないと地獄の炎に焼かれる必要があるよ」という実現不可能なことを言われたというものだった。絶望に暮れるタンホイザーはもう一度ヴェーヌスブルクへ招かれることを願い、再び彼の前にヴェーヌスブルクが現れる。引き留めようとするヴォルフラムとのもみ合いの中、ヴォルフラムが叫んだ「エリーザベト!」の一言でタンホイザーは正気を取り戻してヴェーヌスの誘惑を断ち切る。そこへ現れたのは、自ら命を捧げたエリーザベトの葬列。タンホイザーは彼女の遺体にすがり、息を引き取る。そこへ神の恩寵により杖に若葉が芽吹いたことを知らせる一団が現れ、タンホイザーの魂が赦しを得たことを示して終わる。
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 基本的に長所を取り上げることを旨とするこのブログであるので、この来日公演については多くを書かないでおく。ただヴェーヌスブルクとヴァルトブルク、すなわちディオニュソス的音楽とアポロン的音楽というギリシア時代以来の背反する二つの世界を、新旧二つの音楽スタイルで見事に描いたヴァーグナーの凄さを改めて実感。笛(アウロス)と竪琴(リラ)が象徴する2つの世界、2つの音楽による大きなオペラである。

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

ベルク 歌劇「ルル」 | シェーファー(Sop.)デイヴィス指揮ロンドン・フィル

 普段、休日も何かと仕事をしてしまうたちなので、なかなかオペラをじっくりと見ることができない。というわけでこの連休は久しぶりにオペラを見たいと思っていた。今日観たのは「ルル」。1929年から着手されたオーストリアの作曲家アルバン・ベルクの遺作。全3幕ということになっているが、実際にベルクが完成させたのは2幕までで、第3幕は1979年になって同じオーストリアの作曲家フリードリヒ・チェルハによって補筆された。20世紀の、それも無調音楽を経て12音音列技法に至った新ウィーン楽派の作品ということで、それは決してモーツァルトのオペラのように聴きやすい響きではないかもしれないが、ベルクらしく調性感をふんだんに取り込みながら、歌、声、叫びといった要素が見事に織り込まれた音楽。ベルクが遺した第一級のオペラであり、充実した内容を持っている。

 アルバン・ベルクは、1885年に生まれ1935年に没したオーストリアの作曲家。あのシェーンベルクの弟子であり、同じ弟子のヴェーベルンとともに新ウィーン楽派と呼ばれた。この楽派だけをもって無調からその後の音楽へつながったという認識は乱暴だが、その後の20世紀の音楽に多大な影響を及ぼしたということだけは間違いない。

 そもそも19世紀後半から、導音などによるお決まりの進行による終止という機能の存在意義が薄れたり、不協和音が解放されたり、調性が崩壊したり・・・といった流れの中で、まず初めに師匠のシェーンベルクがやむにやまれぬ状況の中から無調の扉を開き、さらに1921年に12音音列技法という新時代の作曲法を編み出した。このオペラ「ルル」でも、この新技法がいかんなく発揮されているわけだが、ただあまり細かいことに触れても仕方がない。こうしたことを抜きにしたって、20世紀に書かれたこのオペラには、歌と声が効果的に使われたり、途中、無声映画が挿入されたりと、実に面白いから。でも例えば、ワーグナーのライト・モティーフのように、各登場人物に固有の音列が与えられ、それが効果的に用いられているのは興味深い。(主人公ルルに関する音列を何度か繰り返して、その長い音列の何個目かずつの音を等差でとったものが、他の登場人物の音列として使われて・・・という風にそれぞれの音列の作り方にも工夫がある。)


ルル


 今日観たのは、1996年7月27日に英国のクラインドボーン音楽祭(クラインドボーン・オペラ・フェスティヴァル)で上演されたもの。ルル役をソプラノのクリスティーネ・シェーファーが歌い、アンドリュー・デイヴィス指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏のものである。この歌い手を選び、役作りの難しいルルを、シェーファーは見事に演じている。身勝手に自己の欲望を投影しようとする男たちを次々と死に追いやるルル。男を惹きつけてやまない抜群の魔性の中にも、清らかさが同居するシェーファーのルル。クリスタル・ボイスがシンプルな舞台演出と相まって素晴らしいマッチングを見せている。20世紀に生まれたこの名作の、20世紀最高の名演。

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

懐かしき「FM fan」

 連休は素晴らしい。時間がゆっくりと流れていく。というわけで、今朝は後期バロックの作曲家フランチェスコ・ジェミニアーニの合奏協奏曲を聴きながら、数ヵ月ぶりに朝食をとっている。酒飲みの朝食はやっぱり和食・・・というよりも、味噌汁を飲みつつ納豆御飯を食べるのがこの上なく幸せである。


納豆御飯


 ところで昨日までの二日間、CDやテープなどを保管してある倉庫の大整理を実施した。というのも屋根裏に加えて6畳間が一つまるまる塞がってしまっていて、いよいよ奥さんの目が怖くなってきたのである。2日かけてもう二度と聴くことがないだろう録音や、本当は持っていたいがスペースの関係上、やむにやまれず処分したものも合わせて、長野市指定のゴミ袋(大)で17袋分。その他は全て屋根裏に持っていき、リビングにはよく聴くCDだけを残した。一念発起の大処分である。さようなら・・・わがコレクション・・・。

 とはいえ、忘れていた録音を久しぶりに再発見したり、懐かしいものがでてきたりと、それなりに嬉しいこともたくさんあった大整理。例えばこんなものを見つけた。


FM fan


 今から10年前の「FM fan」という隔週刊の雑誌。2001年に休刊となってしまったそうだが、インターネットが普及しておらずホームページで番組表を見ることができなかった時代、この雑誌には本当によくお世話になった。NHK-FMの2週間分の放送予定が、各楽曲の演奏時間に至るまですべて記載されており、しかもクラシック音楽の番組は丁寧に赤で印字されている。クラシック音楽ファンにとっては至れり尽くせりの雑誌だった。これをもとに120分テープをタイマー予約して欲しい音源をエアチェックしていたのが本当に懐かしい。(実際には120分テープをいくつもタイマーかけてほぼ全ての番組を録音し、夜に帰宅してから、寝る間を惜しんで楽曲部分を60分とか90分のテープに落とし込んでいた。完全なるFM漬であった。)


FM fan 1999.2.10


 それにしても上の写真を見て気づくのは、クラシック番組が豊富であることだ。番組の枠もそうだが、内容も名曲からマニアックな曲までを見事なコーディネイトで放送している。この頃のNHK-FMは、こうしたコーディネイト力が素晴らしく、練りに練り上げられた内容だった。例えば、上の写真にある1999年2月10日(水)の放送。早朝のFMリサイタルの再放送の後、「あさのバロック」に始まり、クラシックポートレート、クラシックサロン(再)、FMリサイタル、クラシックサロン、ベストオブクラシックと、平日なのに7つも番組がある。内容にしても例えばラヴェル作曲のシェエラザードだとか、R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ、シューベルト、プーランク、ドビュッシー、マルトゥッチの歌曲、ドニゼッティの弦楽四重奏など、マニア心をくすぐるものが溢れている。

 一方で本日のNHK-FMはというと、ある程度の規模でのクラシック番組が4つしかなく、内容もなにがし作曲の何々から第2楽章のみ・・・といったものが多く、さらに余計なトークが延々と続いたりする。これでは全くエアチェックする楽しみがない。NHKさん、お願いですからやるなら全楽章やってください。トークは楽曲解説に時間を割いてください。というか、お願いですから昔のようにクラシックの番組を増やしてください。


 最後に日曜日にあたる1999年のバレンタインデー。


FM fan 1999.2.14


 クラシック番組で真っ赤。

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

はじめてのガム

今日からお盆休みである。うれしいのである。というわけで、たまっていたわんこ日記をつけるのである。

さて、うちのポコ。
どうにもいろいろなものを噛むのが好き。甘噛みなんだけど、大丈夫なんだろうか。
というわけで、この間1回目のワクチン接種の帰りにペットショップに寄って、ガムを買ってきた。


なんだろう、これは?(首だけのばして、完全に腰が引けてる)
ポコ1


前足で、ちょいちょいっと動かして・・・
前足でちょいちょいっと


逃げた!( ̄□ ̄;
逃げた


お気に入りの座布団の上で、じっと観察。。。
観察中


勇気を振り絞って、再度挑戦。。。後ろ足の片方が座布団に残ったままである。
再挑戦のポコ


ちょっとずつ運んでみる。
運搬中


到着。「なんだろう、これ?」・・・くんくん。
運搬完了


くんかくんか・・・やっぱり気になる。。。
やっぱり気になる


ちょっとだけ噛んでみる。。。
ちょっとだけ


気に入ったみたい。
気に入った


眠くなってきた。。。
眠くなってきた


寝たΣ( ̄□ ̄;
ねた

テーマ : ワンコ日記 - ジャンル : ペット

今夜はしゃぶしゃぶ | 肉のキタムラ

 昔、神奈川県横浜市に住んでいたことがあって、大変お世話になった酒屋さんといまも懇意にしていただいている。その頃住んでいたアパートのすぐ近くにあって、アットホームで素晴らしい酒屋さん。そこからお肉を送っていただいた。


肉のキタムラ パッケージ


 この「肉のキタムラ」という肉屋さんは、妙蓮寺商店街の角にあるお店。同じく住んでいたアパートから徒歩2~3分ということもあって、昔、うちの奥さんがバイトさせてもらっていた本当に懐かしいお店である。


肉のキタムラの豚肉


肉のキタムラの牛肉



 うまかった。


テーマ : 美味しかった♪ - ジャンル : グルメ

今夜はグラタン

 お盆といえば、実家。通常は奥さんの実家に帰省するというパターンなのだろうが、毎年うちの奥さん、お盆はどこも混むし、帰るのめんどくさいとおっしゃる。まあそういうわけで、私の実家に帰省である。とはいえ歩いて1分かからない近所なのだけど(汗)。

 というわけで実家である。実家といえば、おふくろさんの手料理。今日は手作りのグラタンが出てきた。


手作りグラタン


 うまかった。

テーマ : 美味しかった♪ - ジャンル : グルメ

もりそば 中盛 | 「草笛」長野店

暑い(-_-|||)

 本当に暑い。信州は山国だから涼しいというのは山間の地域のことだけで、私の住んでいる長野市などは盆地であるから、夏は30度を越える暑さである。こんな暑い日には何をする気にもなれないが、とはいえお盆も仕事のため頑張るのである。

 というわけで涼しいものが食べたくて職場近くの美味しい蕎麦屋「草笛」に行ってきた。

 この蕎麦屋さん、スゴイのはその量である。普通に大ざるのつもりで大盛りなど頼んでしまったら、大変なことになる。私の職場では新入社員が入ると、この大盛りを食べに連れて行くという風習があって(もちろん強制ではなく志願制)、私も入社の頃、この洗礼を受けた。食べても食べても終わらないそば。決して強制されるということはないのだが、ここで先輩に助けてもらったら漢が廃るとの思いで、必死で食べたことを思い出す。(懐)


草笛 メニュー



 いや、そんな話ではなくって、ここのそば普通に美味しい。今日は中盛を頼んだ。
草笛 もりそば 全景


 コシがあってとても美味しいそばである。それにしても「中盛」だというのに、スゴイ量(笑)。
草笛のもりそば アップ


 やっと底が見えてきた(汗)。
草笛のもりそば 底



 うまかった。


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「草笛」長野店
住所:長野県長野市中御所岡田178-2[地図]
電話:026-228-7373
営業時間:午前11時~午後2時
定休日:無休
駐車場:バスターミナル駐車場(有料)

テーマ : うどん・そば - ジャンル : グルメ

ロパルツ 弦楽四重奏曲第1番ト短調

 19世紀後半の濃厚なロマンのコクにつつまれた厳粛な対位法。そんな弦楽四重奏を聴いている。

 フランスの作曲家ジョゼフ=ギィ・ロパルツ(Joseph-Guy Ropartz)の魅力について、このブログの初期に、国籍混淆と述べたことがあった。フランス的であると同時にドイツ的でもあり、またブルトンの民族音楽の香りがする。多くの優秀な作曲家がそうであるように彼の書法もまた独特である。1854年に生まれ1955年に没した作曲家だが、終生、ロマン主義的な音楽に根差したことも一つの魅了だろう。


Ropartz


 今日聴いたのは、19世紀の終わり1893年に書かれた弦楽四重奏曲の第1番である。演奏はスタニスラフ四重奏団というカルテットだが、よく知らない。ただ情感たっぷりと歌いだす第1楽章冒頭などは見事であるし、絡み合う各声部をきちんと描き分けている。第2楽章は民族音楽の楽しみに満ちている。第3楽章は白眉の美しさ。儚げなロマンティシズムあふれる楽想が移ろいながら、時にシンフォニックな響きすら持ちながら流れていく。"Vif et anime(活き活きと速く)"と指示された第四楽章はこれまた魅惑のブルトンの踊りがすぐれた対位法的処理によって一層高められている。

 それにしてもこのフランクからダンディを通じてもたらされたこの一派の音楽の、なんと魅力的なことだろう。フランス音楽のもつエスプリとブルターニュの素朴で純粋な民謡との出会いの妙味は、他では味わうことができない。こんな楽しい弦楽四重奏曲はめったにない。なぜ今日もっと演奏されないのかが、不思議でならない。

第1楽章冒頭
ロパルツ


[試聴]
http://ml.naxos.jp/album/1C1121

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調 | フルトヴェングラー指揮/ベルリン・フィル(1942)

 非常に残念なことに最初聴いた時、この演奏の素晴らしさに気づくことができなかった。だがその後、ギュンター・ヴァント、オイゲン・ヨッフム、カール・シューリヒトといったブルックナーを得意とする指揮者の盤を聴いたりするうちに、最初に聴いたこの演奏は実は凄かったんじゃないかと思うようになり、今日、改めて聴きなおしてみた次第である。フルトヴェングラーが第二次世界大戦下の1942年の10月25日に、ベルリンのハーモニーザールにてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と行ったライヴ録音である。

 ブルックナーの交響曲第5番は、国によっては「ゴシック」という愛称が付けられているようだが、実際に聴いてみるとまさに堂々とそびえたつゴシック建築のような趣がある。全体を貫くのは一切の大衆迎合的な要素を頑なに拒むブルックナーの精神であり、ブルックナーそのものだ。決して聴きやすいとはいえないが、特に全体に網の目のように張り巡らされた動機と対位法による複雑な構造を理解すると、この曲を聴く喜びは格段に増すことと思う。最初はスコアを見ながら聴いてみるとよいのかもしれない。というのも、このフルトヴェングラーの演奏こそ、スコアのあるなしで、私にとっての意味が変わった演奏だった。

 ヴィルヘルム・フルトヴェングラーは、1886年に生まれ1954年に没したドイツの指揮者である。20世紀が生んだ天才指揮者の中でも、これほど今日まで熱狂的なファンを獲得し、評価を受ける指揮者もいないだろう。カラヤンに代わるまで、ベルリン・フィルの音楽監督として数々の名演を繰り広げ、バイロイトで行ったベートーヴェンの第9は伝説的な名演といわれている。

フルトヴェングラー

 それなのに、である。このフルトヴェングラーが指揮したブルックナーの演奏というのは、いまひとつ評価されていない。よく言われるのがフルトヴェングラー特有の、あのリズムの揺らしである。時にたたみかけるようにアチェレランド(加速)したり、逆に一気にリタルダンド(減速)したりといった演奏が、深い信仰心を持ちつつ大自然や宇宙そのものを表現したブルックナーには人為的過ぎるなどといわれる。実はかくいう私も、ある時分まではそのように思っていた。ところがある時、スコアを手にしてこの音楽をじっくりと聴いてみると、これは実に考えられた、加速なり減速なりであることが分かった。例えばディミヌエンドと楽譜にあるところでのリタルダンドや、逆に急加速の後の静寂。これなど、ブルックナーの原典版を深く読み込んだ人間でなければできない、あまりに自然なリズムではないか。これまでフルトヴェングラーの振るブルックナーについて、いかに皮相的な感受しかしてこなかったのだろうと、深く反省した。

 10:25あたりから始まる第1楽章247小節からのアダージョ。わずか12小節の、比類ない弦の美しさとフルート。
ブルックナー交響曲第5番第1楽章
ブルックナー交響曲第5番第1楽章2

真っ赤に燃えあがる終楽章564小節目からのコーダ。
ブルックナー交響曲第5番第4楽章

 今更ながら思い出したのだが、以前このブログでも取り上げた朝比奈隆氏の回想を読んだ時、朝比奈氏がフルトヴェングラーと面会した時に「原典版でやらなくては」ということを言われたとの記述があった。フルトヴェングラーこそブルックナー音楽の真実の姿を描き出そうとした人だったのだ。リズムを揺らすとか、そういった枝葉末節にこだわるべきではない。この生気漲るエネルギッシュな演奏もまたブルックナーである。そうした聴き方があってもいいんじゃないか。

[試聴]
http://ml.naxos.jp/work/307407

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御影ロッシュ・ノワール | 御影高杉

 職場の方が関西方面に行ってこられたとのことで、お土産を頂いた。「御影ロッシュ・ノワール」というショコラの一種らしい。普段、あんまり甘いものを食べない私であるから、この「御影高杉」というお店が有名なお店なのかどうかも知らないのだが、

なんでしょうか、この美味しさは。

まず箱がカワイイ。
御影ロッシェ・ノワールの箱


そして中にはアーモンドが入ったほんのり苦めのチョコレート。苦めなのがうれしい><;;
・・・感激の味である。
御影ロッシェ・ノワール



うまかった。


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困った

車で迷った(汗)

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ブルックナー 交響曲第7番ホ長調 | 朝比奈隆指揮/大阪フィル(1975)

 前回に引き続いてブルックナーを聴いている。この交響曲第7番は1881年から丸二年近くをかけて作られた。彼の交響曲の中では最も聴きやすい部類に入り、昨日取り上げた6番とは対照的に今日でも演奏機会に恵まれている一曲である。特にワーグナーの死を予感しながら書き進められ、実際にクライマックスの執筆中にワーグナーの死を知った第2楽章は、ブルックナーのワーグナーへの追悼の想いが刻まれている。清澄なフルートと弦のピツィカートに続く、185小節アウフタクトからのワーグナー・チューバによる旋律など、涙がでる。

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今日聴いたのは、生涯をブルックナー演奏に捧げた故・朝比奈隆氏が大阪フィルハーモニー交響楽団と行ったヨーロッパ演奏旅行にて、ブルックナーの聖地である聖フローリアン教会で行った奉献演奏の記録である。

 「アウトバーンを右手に出て低い丘陵地を通り抜けると、小高い丘を中心につつましく寄り添う家並みの向こうに写真で見覚えのある鐘楼が見える。聖フローリアン寺院である。私たちにとって、そこはローマ以来の由緒ある古寺としてではなく、アントン・ブルックナーがかつて住み、音楽をつくり、そして今はその地下に眠る「聖なる地」であった。今度の日程中、リンツでの演奏会が市内のブルックナー・ホールでなくてこの寺院で催されたと知らされた時、私は幸せに酔う思いであった。この日の午後、そこで私たちがその交響曲第七番を演奏するということが現実になろうとしているのである。(中略)私はかなり遅い目のテンポをとり、広間の残響と均衡をとりつつ演奏を進めた。十分な間合いを持たせて第二楽章の最後の和音が消えた時、左手の窓から見える鐘楼から鐘の音が一つ二つと四打。私はうつむいて待った。ともう一つの鐘楼からやや低い音で答えるように響く。静寂が広間を満たした。やがて最後の鐘の余韻が白い雲の浮かぶ空に消えていった時、私は静かに第三楽章への指揮棒を下ろした。」(朝比奈隆著「楽は堂に満ちて」より)

朝比奈隆 楽は堂に満ちて


 ブルックナーが足元に眠る同教会のベルモアザール(大理石の間)、残響7秒という豊かな響きが大阪フィルの音を一層優美な音楽に仕立てている。またここでの朝比奈&大阪フィルの気合の入り方は尋常ではなく、一期一会で一撃必殺な会心の演奏を繰り出している。上に引用した文章でも「かなり遅い目のテンポ」とあるように、この遅いテンポのために、長すぎる残響に埋没してしまいそうな細部も、ある程度までくっきりと浮かび上がる。大阪フィルの演奏も、全体を通して強烈なエネルギーに満ちながらも、この日は無駄な力みがなく、がならない。会場、オーケストラ、指揮者が混然一体となって作り上げた、神々しいまでの音の大宇宙。なんと美しいのだろう。


[試聴]
http://www.hmv.co.jp/product/detail/136953


 天上の美しさに心奪われた後、ふと外に目をやると、夏らしい風景が広がっている。かんかんと照り続ける太陽を受けてうちの菜園でも野菜がすくすくと育っていた。今夜はうまい野菜が食べたくなった。

トマト
ナス

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ブルックナー 交響曲第6番イ長調 | カイルベルト指揮ベルリン・フィル(1963)

 アントン・ブルックナーという作曲家について、よく語られることがある。「彼の音楽は大自然や宇宙の姿そのものであって、ゆえに聴き手を選ぶ。彼の音楽を『理解しようと』してはいけない。大自然に身を任せるが如く、ただその音楽に身を任せればよい。自然とブルックナーの音楽が私たちに近づいてきて、私たちを包み込み、その良さが分かるのだ。」といったところだろうか。確かにブルックナーの音楽は特殊で、こうした聴き方はまったく間違っていない。ただ彼の遺した11曲の交響曲を聴いていると、どうも心を無にして大自然に身を委ねることだけで十分な魅力を感じる曲と、そうでもない曲・・・むしろ幾重にも折り重なる楽曲の構造を一枚一枚丁寧に観察し、「積極的に理解して」初めて分かる味わいをもつ曲とがあるとも最近思うようになり、今日聴いている第6番もその一つじゃないかと感じるこの頃である。

 ブルックナーの音楽が特殊だという点については、いまさら書く必要はないかもしれない。彼の音楽は、最初に聴くと面食らう。西洋音楽がそれまで培ってきたやり方とはまるで違う語法で書かれ、期待すべき部分に期待すべきものがなく、まったく唐突に何かがやってくるからだ。ただ一たびその味わいと深さを覚えてしまうと、今度はこれほど麻薬的で来る日も来る日もこればかり聴いていたいと思う音楽はない。壮大な音の大伽藍の中で、小さな自分が大きな音楽と一体となる恍惚の瞬間がそこにはある。


アントン・ブルックナー


 1824年、ベートーヴェンの第9交響曲が初演された年にオーストリアで生まれたこの作曲家は非常に遅咲きの人だった。最初の習作交響曲を1863年、ほとんど40歳近くなってから書き上げ、以来72年の生涯を閉じるまで、交響曲を中心に音楽を書いた。熱心なワグネリアンとしてワーグナーの音楽に傾倒し心酔する一方で、対立する新古典派の象徴ともいえる交響曲を、しかも一曲一時間を超すような長さで書いたが、そのほとんどの初演が失敗。見かねた友人らがあくまで「善意」で彼の作品を手直ししてやり、生涯に渡る作曲活動と並行して、生涯にわたる改訂も行った。今日に残る作品を書き上げた作曲家の中で、自作に対してこれほど自信がないというのも珍しい。

 まあそんなわけで今日はブルックナーの交響曲第6番を聴いている。スコアを読めば明らかだが、一つの見方として、この曲はリズムの音楽である。リズムによるモティーフが各部で自由に運動しながら、時に息をのむほど美しい瞬間を描いたり、エネルギッシュな爆発となったりと、伸縮自在に変化して全体を引き締めている。この第6交響曲はなぜかブルックナーの交響曲の中でもあまり人気のない曲で確かに分かりやすさという点から判断すると入門に適さない曲であるかもしれないが、じっくり味わうと素晴らしい魅力が随所にちりばめられた名曲である。

カイルベルト


 さて今日聴いている演奏であるが、これは1963年に録音された、ヨーゼフ・カイルベルト指揮・ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のものである。剛直で職人気質の指揮者が、最盛期のベルリン・フィルと渾然一体の演奏を繰り広げている。第一楽章冒頭の低弦の語りに込められた情報量一つとっても群を抜いている。非常にオーソドックスに、しかし凡庸にならないこうしたカイルベルトのうまさは、特に対位法的な第2楽章で顕著な魅力を発揮しているが、もちろんすべての楽章に言えることだ。重層的に重なり合う濃密な一つ一つの線、リズムといったパーツが非常にはっきり、くっきりと浮かび上がる。作為を感じさせない実直なカイルベルトの棒によって、この曲が本来持っている真の美しさが際立つのである。数ある第6番の演奏の中でも、私が感じる中で最高の演奏。1963年の演奏であるが、録音も非常にうまくいっており、古めかしさを感じさせない。


[試聴]※HMVのサイトにて
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2754085


もうひとつ、チェリビダッケがミュンヘン・フィルとスゴイことをやっている。

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第26回夏の夕べのコンサート(桐朋長野教室)

 桐朋学園大学と同付属高校に通う長野県出身の生徒さんが集まる「夏の夕べのコンサート」に行ってきた。毎年夏に開催され、今年で26回目を迎えるこのコンサートであるが、今回はメンデルスゾーン、ショパン、ブラームス、フランク、初期のスクリャービンといった、ロマン主義時代の音楽がズラリと並ぶ豪勢なメニュー。様々な経緯から毎年聴いているが、高校生や大学生である彼女らが、大作曲家の遺した大作を、一生懸命に、しかも素晴らしい水準で弾いてくれる姿を見るにつけ心を打たれる。当然、プロフェッショナルとしてはこれからのみなさんであるから、中には緊張のあまり普段の力を存分に発揮しきれず悔しい思いをされた方もおられよう。だが演奏そのものの出来不出来とは別の、出演者一人ひとりにそれぞれのドラマがあって、大いに感動した一夜だった。音楽を志す学生にこうした機会と場を提供することの意義の深さを改めて実感した。当日の動員は680名であったという。今後ますますこのコンサートが人口に膾炙し、発展していくことを切に願う。

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