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音楽のハナシ03 古代ギリシアの音楽(3)

 楽曲を楽譜として記録する方法を記譜法(きふほう)といい、これは時代や地域によって様々なものがあります。私たちが今日、最も一般的に接する、五本の線の上または間におたまじゃくしを書く「五線記譜法」も、生まれたのはごく最近のこと。それまでは全く異なる記譜法が用いられていました。

 このギリシアの時代に用いられたのは、文字譜(letter notation)という記譜法です。これは音名に対応するアルファベットなどの文字を石板や羊皮紙などに書き連ねるもので、音の高さはわかりますが、リズムなどは不明。当時としては画期的、でも今日からみると非常に曖昧な記譜法といえます。しかも今日この時代の楽譜のうち、現存しているのは、デルポイで発見されたアポロン讃歌などごくわずか。これではそれらの音楽をある程度まで想像することはできても、完全に再現することは残念ながら不可能で、一昨日から試聴欄に「ホントにこんな感じだったのかは知りませんが雰囲気だけでも」と書いているのはこうした理由からです。器楽用と声楽用の2種類の記譜法があり、器楽用はフェニキア文字で音名を記し、声楽用は歌詞の上に、それに相当する音名をイオニア文字で記していました。


古代ギリシアの文字譜
Delphichymn.jpg


 リラとアウロスの話から、楽器についてばかり書いて来ましたが、さきほど声楽用とあったように、この時代の音楽は、詩や舞踊、特に詩と切り離しては考えられないほど、強い関係性をもっていたようです。ホメロスなどの詩も、朗読されるのではなく、必ず何かしらの旋律とリズムを伴って歌われていたようですし、時代とともに詩が高度な韻律を用いて複雑化すると、それに伴って、そこに付される音楽も、特にリズムの分野が目覚ましい発展を遂げました。また同じく後期になると、ある歌の旋律を同時に楽器がなぞって弾いているときに、ときたまその一部を楽器が装飾して弾くようになり、その結果、前回述べた単純なモノフォニー(単旋律)ではなくなるといったことが起きました。しかしこれはまだポリフォニー(多声音楽)と呼べるものではなく、ヘテロフォニーと呼ばれています。またオクターヴで重ねて奏されるマガダイジングという演奏法もあったようですが、やっぱりこれもポリフォニーとは異なるものでした。


ピタゴラス
i82don51.jpg


 この時代にはギリシアならではの音楽理論や特徴が生まれています。鍛冶屋の様々な金槌の音を聞いたピタゴラスは、その金槌の重さの比率から「ピタゴラス音律」を考案しました。また一方でアリストクセノスは数学的なピタゴラス音律を批判し、自らの耳に頼って音を作るべきと説き(「ハルモニア原論」)、また詩を朗読するときの韻律(長い、短い)からリズムを理論的に体系化しました。(「リュトモス原論」)また今日私たちの耳になじみのある音楽は、長短2つの旋法に集約された音楽ですが、この時代は旋法が豊富に用いられていました。例えば以下のようなもので、ピアノをお持ちの方は弾いてみると、それぞれに表情があり、今日の耳からは神秘的な雰囲気のある音階であることが分かります。


The_eight_musical_modes.jpg


 こうした旋法による音楽や理論は、その後のキリスト教の誕生と受容を経た中世ヨーロッパにまで引き継がれることとなります。グレゴリオ聖歌などに代表される中世ヨーロッパの、あの神秘的な響きは、和声的ではなく、一本の旋律の流れ、先行する音と後続する音との継時関係を重視したこうした旋法による文化がもたらしたものなのです。このような旋法性重視の音楽は、16世紀に機能和声に基づくカデンツの音楽に代わられますが、機能和声が最後の頂点と限界を極めた頃に再度復活します。19世紀後半のドビュッシーやレスピーギらの作品に見られるあの独特な旋律線の雰囲気もまた、この古代の旋法たちに由来するものなのです。


[試聴]
First Delphic Hymn to Apollo
http://www.youtube.com/watch?v=8I0EgfFsJMk
※「Hymn(ヒム)」とは賛歌などの意味です。
コメント

すみません

お勉強になります。。。
ですが、もう、なにがなんだか意味不明です。
そうか~。
音階はあったのですね。
ホントに私ってアホですね~~~。v-399
穴があったら入りたいです。v-402

すごいですね

お勉強ということになると、
とたんに難しくなりますね(笑)
でも、よくまとめてくださってるので、
面白いです。
私も嫌いではないなので、
いずれじっくりと攻めてみたいです。

まだまだ、いろんな神さま覚えて
ないので、そこがツライですね。

Re: すみません

はるりんさん、こんにちは!
いえ、こちらこそ月曜日に一気に書きためしたものを微妙な長さで切って予約投稿などしたからなんです。すみません。

でもオクターヴ間の音数を増やすというのは、アリなんじゃないでしょうか。
ただ今日の刺激溢れる音楽(クラシックも含む)に馴れた私たちの耳からは想像もつかないほどに当時の人たちはちょっとの変化とか刺激とかで、興奮し、シビれていたようです。それって実は幸せかもと思ってしまうたこであります。

Re: すごいですね

四季歩さん、こんにちは。
素人の私の、しかも自分のための復習というか、個人的なノートといった感じですので、ホント、間違ったりしてたらすみません。
神様というと、ギリシアってほんと八百万の神ですよね。なんにでも神様がいるのに加えて、いくつか兼務してたりして、分かりにくいです。。。でも一神教の神様と違って、妙に人間くさいところがいいなあとも思うんです(笑)。

こんばんは

段々記事の内容が難しくなってきましたね。
私の知識では辛いです。
ですが、知的好奇心をくすぐられる内容ですね。
凄いです!

ところで、この歌、なにやらお経みたいですね。失礼!
(1)と(2)のYOU TUBEはオリエントの雰囲気たっぷり且つ素朴で凄く良かったのですが。
この歌の歌詞は一体どんな内容なんでしょうね。
不思議な歌です。

Re: こんばんは

kurt2さん、こんばんは。
いつもお読みくださってありがとうございます。
難しいのは知識不足の私が曖昧なことを書いているためだと思います。はう。。

曲ですが、動画にスターウォーズのオープニングのように出てくる説明によれば、紀元前138年及び128年頃のデルフォイのアポロン賛歌とのことで、1893年にフランスの考古学者によって発見された2曲とのことです。後者は前者より少しだけ最近の128年頃、作曲者は"Limenius"(リメニウス?)さんで、デルフォイのアポロン神の神託のお祭りのために書かれたとのこと。前者はおそらくはBC138年のデルフォイの少年合唱の試合のために書かれたものとのことです。多分(汗)。
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