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マーラー 「さすらう若人の歌」 | クヴァストホフ(Br)ベルティーニ指揮ケルン放送響

 桜も終わって、なんか青春の季節だなあとぼんやりと意味不明なことを思っていると、ふとマーラーの「さすらう若人の歌」を聞きたくなった。

 第1曲の出だし。クラリネットによる寂しげな鳥の歌、かっこうが4度で啼く。(マーラーはかっこうを3度ではなく4度で書く。)寂寥感に満ちてひっそりと始まる「さすらう若人の歌」は、若きマーラーが自身の失恋を経験し書きあげた青春の歌。4曲から成る、みずみずしくも寂しい恋の歌である。全曲の至るところに、同じくマーラーの青春大作である交響曲第1番「巨人」に流用されているモチーフが現れ、第1番が好きな人はこの曲と歌詞を味わって聴いたあとに第1交響曲を聞くと、また違った面白さがある。

 演奏はディースカウなどの名盤があるけれど、個人的にはバリトンの名手トーマス・クヴァストホフがベルティーニ指揮ケルン放送響と行ったライヴ録音(CAPRICCIO C71124 [SACD])が最近のベストだ。クヴァストホフの歌はとてもうまく、深みがある。ベルティーニの指揮によるオケは抜群のしなやかさ、そして表情とニュアンスに溢れている。深刻になりすぎず、また重たすぎもしない、けれど寂しい。なんといい曲、いい演奏なんだろう。


C71124.gif
(CAPRICCIO C71124)


[試聴]
http://ml.naxos.jp/album/C71124

 
 曲についての解説や歌詞はウィキペディアに詳しく載っているため、ここに書く必要はないと思われるが、以下、抜粋。



第1曲「恋人の婚礼の時」
男は、恋人を失った悲しみを他人に打ち明けている。男は世界の美しさについて語るが、それは悲しい夢から自分を目覚めさせてはくれないのだ。オーケストラの質感は、ダブルリードや弦楽器の多用によって、甘く切ない。

Wenn mein Schatz Hochzeit macht,
Fröhliche Hochzeit macht,
Hab' ich meinen traurigen Tag!
Geh' ich in mein Kämmerlein,
Dunkles Kämmerlein,
Weine, wein' um meinen Schatz,
Um meinen lieben Schatz!

Blümlein blau! Blümlein blau!
Verdorre nicht! Verdorre nicht!
Vöglein süß! Vöglein süß!
Du singst auf grüner Heide.
Ach, wie ist die Welt so schön!
Ziküth! Ziküth!

Singet nicht! Blühet nicht!
Lenz ist ja vorbei!
Alles Singen ist nun aus!
Des Abends, wenn ich schlafen geh',
Denk'ich an mein Leide!
An mein Leide!

愛しい人が婚礼をあげるとき、
幸せな婚礼をあげるとき、
私は喪に服す!
私は自分の小部屋、
暗い小部屋に行き、
泣きに泣く、愛しい人を想って、
恋しく愛しい人を想って!

青い小花よ! 青い小花よ!
しぼむな! しぼむな!
甘い小鳥よ! 甘い小鳥よ!
君は緑なす野原の上で、こうさえずる。
「ああ、この世って、なんて美しいの!
ツィキュート! ツィキュート!」

歌うな! 咲くな!
春はもう過ぎたんだ!
歌はすべて終わった。
夜、私が眠りに入るときも、
私は苦しみを思うだろう!
苦しみを!



第2曲「朝の野を歩けば」
実際にも歌われているのは、鳥のさえずりや牧場のしずくのような何気ないものの中で、美しい自然界を練り歩く喜びであり、「これが愛すべき自然ではないというのか?」という自問自答がルフランで繰り返される。しかしながら、男は最後になって、恋人が去ってしまった以上、自分の幸せが花開くこともないのだと気づいてしまう。

Ging heut morgen übers Feld,
Tau noch auf den Gräsern hing;
Sprach zu mir der lust'ge Fink:
"Ei du! Gelt?
Guten Morgen! Ei gelt?
Du! Wird's nicht eine schöne Welt?
Zink! Zink!
Schön und flink!
Wie mir doch die Welt gefällt!"

Auch die Glockenblum' am Feld
Hat mir lustig, guter Ding',
Mit den Glöckchen, klinge, kling,
Ihren Morgengruß geschellt:
"Wird's nicht eine schöne Welt?
Kling, kling! Schönes Ding!
Wie mir doch die Welt gefällt! Heia!"

Und da fing im Sonnenschein
Gleich die Welt zu funkeln an;
Alles Ton und Farbe gewann
Im Sonnenschein!
Blum' und Vogel, groß und Klein!
"Guten Tag,
ist's nicht eine schöne Welt?
Ei du, gelt? Schöne Welt!"

Nun fängt auch mein Glück wohl an?
Nein, nein, das ich mein',
Mir nimmer blühen kann!

今朝、野を行くと、
露がまだ草の上に残っていた。
こう、陽気な花鶏(アトリ)が話しかけてきた。
「やあ君か! そうだろう?
おはよう、いい朝だね! ほら、そうだろ? 
なあ君! なんて美しい世界じゃないか?
ツィンク! ツィンク!
美しいし、活気に溢れてるよなあ!
なんて、この世は楽しいんだろう!」

それに、野の上のツリガネソウは
陽気に、心地よく、
その可愛らしいツリガネで、キーン、コーンと、
朝の挨拶を鳴り響かせた。
「なんて美しい世界じゃない?
カーン、コーン! 美しいものねえ!
なんて、この世は楽しいんだろう! ああ!」

そして、陽の光をあびて
たちまち、この世は輝きはじめた。
あらゆるものが音と色を得た―
陽の光をあびて!
花も鳥も、大きいものも小さいものも!
「こんにちは、いい日和だね、
なんて美しい世界じゃないか?
ほら君、そうだろう? 美しい世界だろう!」

では、いまや私の幸せも始まったのだろうか?
いいや、いいや、私の望むものは
決して花開くことがない!




第3曲「僕の胸の中には燃える剣が」
主人公は、失った恋人が自分の心臓に鋼のナイフを突き立てたという思いに苦しんでいる。主人公は、身の回りのすべてのものが恋人を連想させるというほどに、明らかに執念にとり憑かれており、自分にナイフがあればよいとさえ願う。

Ich hab'ein glühend Messer
Ein Messer in meiner Brust,
O weh! Das schneid't so tief
in jede Freud' und jede Lust.
Ach, was ist das für ein böser Gast!
Nimmer hält er Ruh',
Nimmer hält er Rast,
Nicht bei Tag, noch bei Nacht, wenn ich schlief!
O weh! O weh!

Wenn ich den Himmel seh',
Seh'ich zwei blaue Augen stehn!
O weh! O weh! Wenn ich im gelben Felde geh',
Seh'ich von fern das blonde Haar im Winde wehn!
O weh! O weh!

Wenn ich aus dem Traum auffahr'
Und höre klingen ihr silbern' Lachen,
O weh! O weh!
Ich wollt', ich läg' auf der Schwarzen Bahr',
Könnt' nimmer, nimmer die Augen aufmachen!

燃え盛るナイフが、
一本のナイフが胸の中に!
おお、痛い! ナイフは余りにも深々と
喜びと楽しみ一つ一つに突き刺さっている。
ああ、なんと忌まわしい客なんだろうか!
決して休むことなく、
決して止むことなく、
昼となく、夜となく、眠っている間にも!
おお、痛い! おお、痛い!

空を見ると、
二つの青い眼が見える!
おお、痛い! おお、痛い! 黄色の野を行くと、
ブロンドの髪が風になびいているのが見える!
おお、痛い! おお、痛い!

夢からとび起きて、
彼女の白銀のような笑みが聞こえたとき、
―おお、痛い! おお、痛い!―
こう願った、私が黒い棺に横たわっていたならと、
目が二度と、二度と開かなかったならと!



第4曲「恋人の青い瞳」
恋人のまなざしの面影にどんなに自分が苦しめられたか、もう耐えられないほどだと歌われている。男は菩提樹の木陰に横たわり、何事も起こらなければよい、万事好転すればよい(「何もかも。恋も、悲しみも、世界も、夢も!」)と願いながら、花びらが体の上に覆いかぶさるのに任せる。

Die zwei blauen Augen
von meinem Schatz,
Die haben mich in die
weite Welt eschickt.
Da mußt ich Abschied nehmen vom allerliebsten Platz!
O Augen blau, warum habt ihr mich angeblickt?
Nun hab'ich ewig Leid und Grämen.

Ich bin ausgegangen in stiller Nacht
Wohl über die dunkle Heide.
Hat mir niemand ade gesagt, ade!
Mein Gesell' war Lieb' und Leide!

Auf der Straße steht ein Lindenbaum,
Da hab'ich zum ersten Mal im Schlaf geruht!
Unter dem Lindenbaum, der hat
Seine Blüten über mich geschneit,
Da wußt'ich nicht, wie das Leben tut,
War alles, ach, alles wieder gut!
Alles! Alles, Lieb und Leid
Und Welt und Traum!

二つの青い眼、
愛しい人のが、
私をこの
広い世界へと追いやった。
さあ、私は最愛の地に別れを告げなければ!
おお、青い眼よ、なぜ私を見つめたりしたんだ?
いま私にあるのは、永遠の苦しみと嘆きだ。

私は旅立った、静かな夜に、
暗い荒れ野をすっぽりと包む夜に。
惜別を私に告げる者などいないが―さらばだ!
私の仲間は愛と苦しみだった!

街道のそばに、一本の菩提樹がそびえている。
その蔭で、はじめて安らかに眠ることができた。
菩提樹の下、
花びらが私の上に雪のように降り注いだ。
人生がどうなるかなんて知りもしないが、
全て―ああ―全てが、また、素晴らしくなった。
全て! 全てが、恋も、苦しみも、
現(うつつ)も、夢も!

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

コメント

なんと

マーラーは、全曲集めるつもりなので、
当然・・・・・と思いきや!
購入リストから漏れているウカツさ(汗)
ありがとうございます。
さっそくリストに追加。

もう若人ではありませんが(笑)、
絶対聴きたくなりました。

Re: なんと

四季歩さん、こんにちは。
「さすらう若人の歌」、いいですよ~。
1952年録音のディースカウによるものが有名で確かに良いのですが、このクヴァストホフの現代的な歌い方を聞いてしまうと、私にはちょっと感情移入に過ぎ、声も甘すぎる気がしてしまい、この辺は100%好みなんだろうなと思いました。ところで何か全曲通して試聴できる音源をと思って探していたら、このディースカウの録音、今はパブリックドメインになってるんですね。こちらのブログさんで公開されてました!ビックリです。

http://freeclassicmusicmp3.blog23.fc2.com/blog-entry-894.html

ディースカウ盤

こんばんは

私はディースカウ盤しか持っていませんが、この曲を
聴くと、いつも胸がキューンと締め付けられます。
苦しいのではなく、哀しい感じが大好きです。

No title

こんにちは

マーラーのこの曲は実は未聴なんです。
以前は歌曲がどうも苦手だったのですが、最近は好きになってきたので聴いてみようと思います。

私が持っているCDはマーラーの交響曲全集に入っているブリギッテ・ファスベンダーがメゾソプラノで指揮がシノーポリのものです。

Re: ディースカウ盤

メタボパパさん、こんにちは。
四季歩さんへのコメントで好みと書きましたが、
今回、改めてディースカウ盤も聞き直してみたのですが、やっぱりいいですね^^
胸が締め付けられる感覚、一緒です。
マーラーはシンフォニックな器楽とともに歌曲がすごく良くて、定期的に聴きたくなってしまいます。

Re: No title

kurt2さん、こんにちは。
私も昔、歌曲を録音で聴くことの良さがちっとも分からなかったんですが、なんだかだんだんと好きになり、今ではかなりの頻度で声楽ばかり聴くようになってしまいました。(汗)
ファスベンダーといえば男役で有名なメゾソプラノですね。
上述のディースカウもいいですし、良い曲なので是非お聞きになってみてください!^^
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