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J.S.バッハ フランス風序曲 | グレン・グールド(ピアノ)

 私の勤める会社は2月が決算なので、この時期とても忙しい。でも今日は午後だけ休暇が取れたので、久し振りにじっくりと音楽を聴こうと思った。偶然につけたニューヨーク・タイムズのラジオから、ピアノ、それもバッハが流れていた。こちらは15時台だから、向こうは深夜の1時すぎ。深夜放送になるのだろう。通常ハープシコード(チェンバロ)が用いられるバッハの音楽をピアノで弾いていて、録音中であるのにおかまいなしにハミングが聞こえる・・・となればまず間違いなくグレン・グールドで、番組表を見るとはたして彼が弾くJ.S.バッハ作曲「フランス風序曲」だった。


グレン・グールド フランス風序曲
Sony 52609

 グレン・グールドは、1932年に生まれ、1982年に没したカナダのピアニストだ。7歳でトロント王立音楽院に入学し12歳で卒業。デビュー後は世界各地で公演を成功させ絶賛された天才である。

 今日聴いたバッハも、黒光りするような硬質な音の粒ではあるが、そこで紡がれる音楽は、まるでハープシコードのような典雅な響きがある。グールドの類まれなる音楽性とともに、これはグールドの使うピアノのためでもあるんじゃないかと思った。「グールドは浅いタッチを好み、それは極端に浅い(軽い)ので時には演奏や録音の最中に問題を起こすことがあった。ピアノは打鍵するとフェルトのハンマーが弦を打ち、続いてバックチェック(註・戻ってくるハンマーを受け止める機能)がハンマーを安定させる。だがグールドの場合は打鍵のアフタータッチの感触がほとんど無く、時にはハンマーが弦とバックチェックの間を上下に踊ることがあった。」(フランツ・モア著「ピアノの巨匠たちとともに」)

 フランツ・モアという人は、長年スタインウェイ社のコンサート・テクニシャンとして、グレン・グールド、ウラディーミル・ホロヴィッツ、アルトゥール・ルービンシュタイン、エミール・ギレリスといった伝説的な巨匠ピアニストの調律を担当したピアノ技術者(調律師)である。この記述を読む限り、グールドのピアノは、ハープシコードのタッチに極めて近いことがわかる。きっとハープシコードのように軽く、指先による打鍵と、それに続く打弦の感触が一体となって感じられるようなタッチだったのだろう。しかし同じくグールドの弾くブラームスなどを聴くと、アフタータッチの感じられないピアノで、よくあそこまでコントロールされた音楽ができるものだと感心してしまう。グールドが好んで用いたCD318という製造番号のスタインウェイは、彼の癖によほどよく馴染んだアクションだったのだろう。

 グールドの弾くバッハは、パーフェクトに把握しきった楽曲の構造に対する理解に加えて、ピアノが良く歌い、瑞々しい。32歳の若さで一切のコンサート活動を停止し録音一筋に生きた彼であるが、こうして遺された演奏を聴くと、その音楽に内在する見事な即興性は何度聴いても初めて聞くような新鮮味がある。

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

コメント

再創造

グールドのバッハといえば、ゴールドベルク変奏曲の再創造が最近ではとても印象的でした。

1955年の演奏を現在の技術で再現したものといわれていますが、これは私には受け入れられませんでした。

アマチュアといえども、一演奏家である私にとって「呼吸」が感じられない音楽に対して拒絶反応を示してしまったのです。

今度ぜひ感想を聞かせてください。

遅くなってしまいましたが、グールドが演奏するバッハはこのフランス風序曲も含め大好きです。

グールドの再創造

>reinさん
いつもコメントありがとうございます。実は「再創造」、面白そうだなあと思いつつもまだ聴いていません。今日はHMVのサイトにて試聴しただけなので全部を把握したわけではないのですが、reinさんと同じく、グールドの音楽を求めて聴くと、これはちょっと。。。(でも、こういう「試み」という観点で聴けば面白いとは思うんですが。)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2533802

reinさんのおっしゃる通り、演奏に呼吸感が全くなく、また音像の先に演奏者の気配や動きが感じられず、ただの「きれいごと」に終始してしまっているように思いました。もう一つは本文でも触れた彼の「ピアノ」についてあまりに無頓着で、生前のグールドがどれだけ「彼のピアノ」にこだわったかが全く理解されていないように感じました。同じ生身の演奏家でも、ピアノが異なれば全く音が異なりますし、グールドのように自分のピアノでなければ弾かないといった演奏家ならなおさら損失は大きいと思います。(グールドの愛したシリアルナンバーCD318というピアノはグールドの最晩年、オーバーホールに大失敗してグールドにとっては使えないものとなってしまい、その意味では失われてしまったといえますし。)

この音響は、「グールドのテクニックの再現」であって、「グールドの音楽の再現」ではないと思いました。そもそもスタインウェイで録音した55年の演奏をヤマハで再現すること自体無理があるのではないでしょうか。(私、ヤマハ大好きですので、スタインウェイよりヤマハが劣っているという意味では決してないのですが。)

ちなみにナクソス・ミュージックライブラリーに面白い録音があります。55年の録音の1年前、1954年に録音されたグールドのゴールドベルク変奏曲。打って変って超スローテンポな演奏で、この一年でいったい何があったの!?と思う演奏です。
http://ml.naxos.jp/album/PSCD2007
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